鰺坂学・西村雄郎・丸山 真央・徳田 剛 編著『さまよえる大都市・大阪』
信濃毎日新聞 第49296号 2019年9月22日
バブル経済の崩壊、中心部の遊休地に大型マンションが林立するようになった大阪は、2000年代に入った頃から人口の都心回帰が著しい。本書は、その背景や地域コミュニティーの変容について、関西などの大学の社会学者約20人が共同研究した報告書だ。
大阪は東京と双璧する大都市でありながら、東京への一極集中が進む中で地盤沈下がいわれ、さまよえる状況が続いていると本書は指摘する。その再生を狙った「大阪都構想」は15年に住民投票が行われ、否決された。08年からの共同研究はこの時期と重なっており、同構想を支持した層と人口の都心回帰に関連性があるのか―を住民意識調査で分析を試みている。
都心周辺に住むマイノリティー(少数者)も重要テーマだ。最大グループだった在日コリアン住民が減少しベトナム籍住民が急増するなど多国籍化する実情や、夜間中学から見える変化にも迫った。大阪市は25年に万博を開催する。都市の求心力をどう高めるか注目される。
(東信堂、4104円)