【書評】大森秀子著『成瀬仁蔵の帰一思想と女子高等教育――比較教育文化史的研究』

【書評】大森秀子著『成瀬仁蔵の帰一思想と女子高等教育――比較教育文化史的研究』

(A5・296頁・¥3200+税)

 

全私学新聞 2020年2月13日

 

成瀬の思想形成の全体像解明

 日本女子大学の創立者・成瀬仁蔵は女子高等教育のパイオニアとして知られる。本書は10年前著者が記した成瀬の研究所の続きで、前著では成瀬がキリスト教学校の推進者となり、リベラル・プロテスタンティズムを基にした米国の哲学者の思想や教育から影響を受け帰一(別々の事柄が同一のものに帰着する)思想を築き、宗派にとらわれない宗教教育を実践したことを記した。今回は比較教育史の観点から、成瀬の米国の思想の受容について再考し、思想形成の全体像の解明を試みるものとなっている。
 宗教と女子高等教育という二つの領域を軸にして、米国留学で得た学問の潮流を帰国後実践し、さらなる受容から思想を変容させていく過程を考察。またリベラル・エデュケーションを基礎とし人格教育を重視した教育理念を共有しながら、それと専門教育とのバランスが取れた教育モデルを打ち出した点について、他の思想家やキリスト教学校と比較して記載。没後100年を迎えた成瀬の、相互理解と共通点の発見・発展から調和と共生を願った帰一思想への理解が深まる一冊となっている。
 著者は青山学院大学教育人間科学部教授の大森秀子氏。

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