『現代国際協力論―学融合による社会科学の試み』
(A5判、280頁、3200+税)
学融合から国際協力への課題
全私学新聞 令和3年2月13日 第2535(4)読書―新刊を紹介しますより
本書は「現実の理論実践主義に拠ってたつ、法学、経済学および社会学からの諸課題への接近では困難であるため、社会科学における『学融合』からの国際協力の課題への取り組みの重要性を改めて提起」(柳田辰雄氏)したものである。
「社会科学としての国際協力論」「揺らぐ国際システムの中の国家」「市場経済」「相互依存」「国際通貨・貿易制度」「国際援助の動態」「法と持続可能な発展」「貧困削減と金融包摂」「地球温暖化問題」「生物多様性」「イスラム社会と市場」「日本社会と移民―共生に向けた挑戦」――からなる。
このうち「生物多様性」では、生物多様性条約、愛知ターゲット(2010年第10回締約国会議)と名古屋議定書の成果、持続可能な開発目標(SDGs)、ラムサール条約などを紹介、「人間生活の基礎的な物やサービスは自然に由来しているものが多くあることを鑑み、保全と持続可能な利用を進める努力が今後も一層必要とされる」とまとめている。また、「日本社会と移民」では、日本における外国籍住民の現在、外国人住民調査に見る暮らしの実情など共生をめぐる課題を示した上で、共生に向けた取り組みとして、①中央官庁による取り組み②愛知県・ライフサイクルに応じた支援や群馬県・「多文化共生推進士」の育成等地方自治体による取り組み等を報告している。編著者は柳田辰雄・東京大学経済学博士。