加速度的に進行する東京一極集中に抗し、地方社会は何ができるか?
多くの地方社会が高齢化や人口減少といった共通の危機に直面している中、地域の地理的・産業的特性を活かし、独自の〈地域生活文化圏〉を発達させてきた地域がある。本書は、「平成の大合併」が行われたかどうか、人口が10万人以上かどうかを基に4象限に分け選定された各地域―北海道帯広市/宮城県大崎市/京都府綾部市・福井県鯖江市/大分県日田市―における綿密な調査分析を通し、それぞれの〈地域生活文化圏〉の持つ特徴を浮かび上がらせる。同じ危機に直面するさまざまな地方社会に援用可能な理論的示唆にも富んだ画期的研究!
タイトル | 地方社会の危機に抗する〈地域生活文化圏〉の形成と展開 |
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刊行日 | 2024年8月 |
著者 | 西村雄郞・岩崎信彦編著 |
定価 | ¥16500(本体¥15000+税) |
ISBN | 978-4-7989-1889-1 |
Cコード | 3036 |
ページ数 | 840 |
判型 | A5 |
製本 | 上製 |
西村雄郞(にしむら たけお)(編著者)
広島大学名誉教授。1956年北海道小樽市生まれ。金沢大学大学院文学研究科修士課程修了、博士(文学)(神戸大学、2007年)。地域社会学。著書に『阪神都市圏における都市マイノリティ層の研究』(社会評論社、2006年)、『大阪都市圏の拡大・再編と地域社会の変容』(ハーベスト社、2007年)、共編著に『京阪神都市圏の重層的成り立ちーユニバーサル・ナショナル・ローカル』(昭和堂、2008年)、『現代地方都市の構造再編と住民生活―広島県呉市と庄原市を事例として』(ハーベスト社、2017年)、『さまよえる大都市・大阪 「都心回帰」とコミュニティ』(東信堂、2019年)
岩崎信彦(いわさき のぶひこ)(編著者)
神戸大学名誉教授。1944年福岡県北九州市生まれ。京都大学文学研究科博士課程(単位取得退学)。地域社会学、理論社会学。著書に『都市論のフロンティア』(有斐閣、1986年、共編著)、『町内会の研究』(御茶の水書房、1989年、共編著・責任編集、2013年『増補版 町内会の研究』)、『阪神・淡路大震災の社会学』第1 巻、第2 巻、第3 巻(昭和堂。1999年、共編著・責任編集)、『「貨幣の哲学」という作品』(世界思想社、2006年、共編著)、『京阪神都市圏の重層的なりたち ユニバーサル・ナショナル・ローカル』(昭和堂、2008年、共編著・責任編集)、『21世紀の「資本論」 マルクスは甦る』御茶の水書房、2015年、単著)、『ラディカルに自己刷新するマルクス』(かもがわ出版、2018年、単著)。
序 本研究の課題と分析の視点
1 章 研究の課題と調査対象地域の特性 西村 雄郎
2 章 研究の方法―「地域生活文化圏」の分析枠組み 岩崎 信彦・西村 雄郞
補論 調査対象6 地域の農業の特徴 岩崎 信彦
Ⅰ部 大規模農業生産基地における農業と地域生活文化の展開―北海道十勝・帯広地域生活文化圏 ―
1 章 十勝・帯広地域生活文化圏の地域特性と研究の課題 西村 雄郞
2 章 十勝・帯広地域生活文化圏の地域形成過程と地域構造 西村 雄郞
3 章 十勝・帯広地域生活文化圏における農協経営主義の展開と士幌町農協における農協インテグレーション 西村 雄郞
4 章 十勝大規模畑作地帯における農業経営の展開と農民の対応 西村 雄郞
5 章 「危機に抗する」大規模家族経営農家ならびに「商系」卸売業者の活動と論理 岩崎 信彦
6 章 高泌乳牛酪農の矛盾と「危機に抗する」集約放牧酪農 岩崎 信彦
7 章 十勝女性農業者の活動と視点 佐藤 洋子
8 章 十勝の大規模農業と消費者を結ぶ取り組み 佐藤 洋子
9 章 十勝・帯広地域生活文化圏の形成と地域メディアの影響力 小内 純子
10 章 十勝・帯広地域生活文化圏における若者の地域移動と生活 西村 雄郞
Ⅱ部 兼業稲作地帯における1市6町の広域合併と新しい地域生活文化の形成―宮城県大崎地域生活文化圏―
1 章 大崎地域生活文化圏の地域特性と研究の課題 西村 雄郞
2 章 地方社会の危機に抗する生活者の活動と論理 岩崎 信彦
3 章 合併自治体旧郡域における地域農プロデュース 藤井 和佐
4 章 地方社会の危機に抗する〈鳴子の米プロジェク戸>型CSA の可能性 藤井 和佐
5 章 現代のアジール(避難場)としての温泉地 岩崎 信彦
6 章 海の手山の手ネットワークの新聞バッグ 佐藤 洋子
7 章 分権型自治の仕組と住民参加のまちづくり
1 大崎市合併と地域自治組織活動の現段階 小内 純子
2 「話し合う協働のまちづくり」という地域イデアの形成 岩崎 信彦
3 「話し合いの場づくり」を推進する市民グループの活動と論理 岩崎 信彦
8 章 市町村合併と地域メディアによる情報過疎・情報格差への対応 小内 純子
Ⅲ部 農工混交地域の形成と地域生活文化の展開―京都府綾部地域生活文化圏、福井県鯖江地域生活文化圏 ―
1 章 綾部地域生活文化圏、鯖江地域生活文化圏の地域特性と研究の課題 西村 雄郞
2 章 京都府綾部地域生活文化圏の歴史的展開と社会動態 鯵坂 学・河野 健男
3 章 Iターン移住者、集落支援員による集落活動の展開 松宮 朝
4 章 「半農半X」に共鳴したI ターン移住者の活動と地域社会 河野 健男・鯵坂 学
5 章 福井県鯖江地域生活文化圏:フレキシブルな中小零細製造業が集積する地方都市 鯵坂 学・河野 健男
6 章 鯖江市における女性と仕事 佐藤 洋子
Ⅳ部 中山間地域における農林業の展開と農協のイデア―大分県日田地域生活文化圏―
1 章 日田地域生活文化圏の地域特性と研究の課題 西村 雄郞
2 章 危機に抗する大山町農協の取り組み:農協イデアの足跡を辿る 加藤 泰子
3 章 地域を守る大山町農協の模索:農協イデアの継承に向けて 加藤 泰子
4 章 社会的危機に抗うローカルメディアの実践 寄藤 晶子
5 章 津江地域の林業と住民生活 杉本 久未子
6 章 過疎地域における住民生活と地域の範囲 高野 和良
7 章 小規模非合併農協による地域生活文化圏の形成と課題 堤 圭史郎・相川 陽一
終章 地方社会の危機に抗する<地域生活文化圏>の展開 岩崎 信彦・西村 雄郞
1 地方の「構造」3 類型と「危機」の様相―畑作四品50ha 農業、兼業稲作経営、ならびに中山間地農業
2 「構造」レベルでのイシュー
3 「構造」から「社会場」へ
4 「生活現場」から「社会場」へ
おわりに/執筆者紹介/索引