浮上する近代教育学生成のパトス現代の教育制度や教育観の根底をなす18世紀以来の近代教育学は、今日教育が露呈している矛盾や欠陥に対し無力なばかりか、むしろそうした負の現実の根本原因なのではないか?──ポスト・モダン論議が浮上させたこれらの批判に対し、カント、ルソー、ペスタロッチーはじめ、完成された体系の提示ではなく、その啓蒙、自律、汎愛の教育学生成時の内実に分け入り、忘れられていた近代教育学のパトスと可能性を浮き彫りにした労作。
タイトル | 近代教育学の成立 |
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刊行日 | 2010年4月1日 |
著者 | 森川直著 |
定価 | ¥4180(本体¥3800+税) |
ISBN | 978-4-88713-973-2 |
Cコード | 3037 |
ページ数 | 296 |
判型 | A5 |
製本 | 上製 |
近代教育学の成立/目次
はしがき
序章―近代教育学を問う―
第一章 一八世紀近代の教育学的パラダイム
第一節 一八世紀啓蒙の地平
一 啓蒙の世紀
二 ドイツ後期啓蒙主義の自己理解
第二節 啓蒙の哲学と教育学―カントを中心に―
一 カントの啓蒙の精神と哲学
二 カントの教育学
第三節 近代教育学の範例―ルソー―
一 子どもからの教育学
二 教育の五段階
三 教育学的思考のパラドックス
第二章 ドイツ啓蒙主義教育学の生成
第一節 汎愛派の教育改革運動の展開―『総点検』の成立とその背景―
一 フィラントロピヌㇺの創設―バセドウ―
二 教育改革運動の新展開
三 『総点検』の成立とその背景
第二節 汎愛派のルソー受容
一 汎愛派のルソー受容の立場
二 汎愛派のルソー解釈―パラドックスの論議をめぐって―
三 汎愛派の思考形式―ルソーとの比較―
四 汎愛派の教育学的帰結
第三節 汎愛派の教育学構想―カンペを中心に―
一 汎愛派のロック受容
二 ライプニッツのロック批判
三 第二のライプニッツ受容
四 カンペの「自然の教育」の構想
第四節 汎愛主義教育学の修正―シュトゥーフェの教育学構想―
一 人間認識と解放
二 シュトゥーフェの教育学的直観構想
三 教育学的導き―汎愛主義の修正―
第三章 ペスタロッチー教育学の成立
第一節 近代化の文脈におけるペスタロッチー
一 時代史的文脈
二 近代化
三 ペスタロッチーの思考における近代化への移行の危機
第二節 近代の人間学的構想―その教育学的帰結―
一 『探究』における人間学的構想
二 「自己醇化」としての陶冶
三 人間学的構想の帰結としての教育学
第三節 「メトーデ」の成立
一 「メトーデ」の基礎づけ―シュタンツにおける実践と理論―
二 「メトーデ」の成立―その本質と目的―
三 「メトーデ」の基本原理―直観と自己活動の原理―
四 「合自然」の基礎陶冶の「メトーデ」
第四節 ペスタロッチー教育学の近代的意義
一 ペスタロッチーの「陶冶」概念―近代陶冶論史における位置―
二 「合自然の教育」―近代教育の論理―
第四章 陶冶論的教育学への展開
第一節 啓蒙主義教育学批判と新人文主義への展開
一 啓蒙主義教育学批判
二 新人文主義の陶冶理論への展開―ニートハマーの『論争書』の分析―
第二節 陶冶理論の構築
一 フンボルトの陶冶理論
二 教育の理論と陶冶過程の現実―シュライエルマッハーとヘルバルト―
終章 ―まとめと展望―
あとがき
引用文献
人名索引
事項索引