タイトル 歴史認識と民主主義深化の社会学
刊行日 2016年11月10日
著者 庄司興吉編著
定価 ¥4620(本体¥4200+税)
ISBN 978-4-7989-1398-8
Cコード C3036
判型 A5
製本 上製

日本と世界の根本問題に取り組む意欲的論集

テロと大量難民、核実験とミサイル発射などで苦悩する世界のなかで、本書は、日本の代表的社会学者13名が、これまでの研究をふり返り、民主主義と社会学、日本的な共同体・地域・企業の変貌、日本からアジアへの共同性の追究と企業の展開、日本から世界への国際意識と自立と歴史認識の提起をつうじて、民主主義深化と平和強化への途を展望した意欲的論集である。

はしがき

序 今なぜ歴史認識と民主主義深化の社会学か? ………………………………… 庄司 興吉
1 現代日本はどんな課題に直面しているのか?
2 歴史認識と民主主義深化はなぜ重要なのか?
3 日本こそ世界の社会認識を変えなければならない!
4 戦後日本社会学の到達水準と新たな課題

第Ⅰ部 戦後民主主義の社会学と社会運動論
北川隆吉とマルクス主義社会学 ……………………………………………………… 副田 義也
Ⅰ はじめに
2 マルクス主義社会学の成立 ― 『講座現代社会学』(一九六五年)
3 『講座現代社会学』の書評
4 マルクス主義社会学の発展
5 『現代社会学辞典』の書評
6 補 遺

北川隆吉の組織―社会運動論 その軌跡から見えてくるもの ………………… 矢澤 修次郎
1 問 題
2 問題の限定
3 北川社会学の出発点
4 第一期(一九五〇年代中頃―一九五九年)
5 第二期(一九六〇年―一九七〇年)
6 第三期(一九七〇年―一九八九年)
7 第四期(一九九〇年以降)
8 知的ネットワーカーとして
9 結びに代えて

第Ⅱ部 日本的な地域・企業・階層の社会学
地域社会の変容と自治の単位 ………………………………………………………… 蓮見 音彦
1 はじめに
2 自然村概念の転換
3 村落共同体の解体と残存
4 農業・農村の変化と地域社会の喪失

地域間格差問題と地域再生の課題 …………………………………………………… 北島 滋
― 批判的構造分析の視座から
1 問題の所在と限定
2 東京圏を含む大都市圏への人口移動の要因
3 日本の高度成長政策の推進と歪な国土構造の形成
4 一九八〇年代の地域振興策の結末
5 財政悪化と地域 ― 一九九〇~二〇〇〇年代、地域にとって失われた二〇年なのか
6 地域再生の有効な〈再生策〉(特効薬)はあるのか
7 地域社会・経済質量再生モデルに基づく多様な地域再生の構想

中小企業の「家」構造と家業の社会学 ……………………………………………… 鎌田 彰仁
― 社会集団論的アプローチの意義
2 家族経営と事業承継
3 家族と家業の境界 家意識と家族従業制
4 家構造と家業の現在
5 おわりに

産業グローバル化先進都市への変容と社会階層 …………………………………… 丹辺 宣彦
― 豊田市とトヨタ自動車をめぐって
1 はじめに
2 地域開発と先行研究の図式
3 定住化と職住の接近
4 社会関係資本の蓄積と周辺階層の位置づけ
5 産業都市形成の段階論
6 むすび ― 都市類型上の意義と階層論へのインプリケーション

第Ⅲ部 日本からアジアへ:反省と貢献
日本統治期台湾の同化教育と台湾意識の形成と挫折 ……………………………… 佐藤 守弘
1 問題意識
2 日本語教育の受容 一八九五~一九二〇
3 台湾意識の覚醒 一九二一~一九三四
4 一九三〇年代のマス・メディア
5 忍従の台湾意識 一九三六~一九四五
6 結 び

村の比較社会論 ………………………………………………………………………… 高橋 明善
1 はじめに
2 鈴木榮太郎と自然村概念の周辺
3 有賀喜左衛門の家・村論の再検討
4 ジャワと沖縄の村
5 中国の村落自治

在中国日系企業の人材マネジメントの現実と課題 ………………………………… 柴田 弘捷
1 はじめに
2 中国への日本企業の進出状況 ― 量・質の変化
3 雇用環境の変化
4 ホワイトカラー人材の就業意識・行動
5 日系企業の人材マネジメント
6 中国人材の「質・能力・意識」の評価のギャップ
7 むすびに代えて ― 低廉労働力依拠思想からの脱却、真の現地化を

第Ⅳ部 日本から世界へ:何ができるのか
戦後日本の社会学と国際意識 ………………………………………………………… 宮島 喬
1 はじめに
2 戦後的状況と〈世論〉の虚構
3 圧倒的な親アメリカ意識とそれを可能にしたもの
4 対外意識と権威主義
5 「日本人の国民性」論のステレオタイプ
6 欧米 対 アジア 閉じた国民国家の視座
7 国民国家イデオロギーと在日朝鮮人
8 ネオ・ナショナリズム
9 結びに代えて

二〇一五年の沖縄 独立・自己決定権・自治 ……………………………………… 古城 利明
1 はじめに ― 『「帝国」と自治』をふまえて
2 東アジアの地政学的変化と沖縄
3 あるウチナーの想い ― 沖縄本島北部、本部町在住家族へのヒアリング
4 独立・自己決定権・自治

日本から世界へ ………………………………………………………………………… 庄司 興吉
― いかなる社会理論を発信できるか?
1 プログラム科学・愛他主義・新時間プログラム
2 米ソ冷戦の世界から地球社会と市民連携へ
3 「帝国」論議・社会形成の論理・市民社会
4 世界中の民衆を主権者とする地球社会の理論
5 地球民主社会に向けての日本社会の課題

特別寄稿
「現場からの民主化」と「社会学すること」 …………………………………………… 折原 浩
― 戦後精神史の一水脈
1 はじめに
2 学生とも対等な人間として ― はじめての北川
3 SSM調査への協力拒否 ― 北川の実存的決断
4 実存主義・マルクス主義・マックス・ヴェーバー ― 一九三五年生まれの思想模索
5 学恩の二焦点 ― 難問「マルクスに翻案せよ」と、社会調査技法の「両義的」範示
6 「政治の季節」と「学問の季節」との「螺旋」に向けて ―「六〇年安保闘争」から
7 政治運動と学問研究との狭間で ―「六二~六三年大管法闘争」から
8 「ヴェーバー生誕一〇〇年記念シンポジウム」と「戦後近代主義」の限界
9 「東大紛争」の政治 ― 社会的背景と直接の争点、当局と教員の対応
結びに代えて

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