新たな市民性教育をめざすべく、「中立的」に議論することは可能か!?
歴史事件や社会正義をめぐる論争的な問題は、歴史修正主義や陰謀論、フェイクニュースも入り混じった情報がSNS などを媒介して流布される今日、理解する上でより複雑なものとなっている。同時に、論争的問題は正/ 不正の二項だけではなく、政治的・社会的・宗教的ほか様々な理由によってそもそも議論自体がゆるされない「閉ざされた領域」にある場合も多々ある。本書は、各国の教育現場で行われている論争的問題の教育の中でいかにカリキュラムや授業内で「中立性」「客観性」を担保しているのか、それぞれの教育実践を鳥瞰する。よりよい市民性教育に向けた第一歩を後押しする教職員・学生必読の一冊!
タイトル | 世界の論争問題教育 |
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サブタイトル | 閉ざされた領域をどう考えるか |
刊行日 | 2024年4月 |
著者 | トマス・ミスコ、ヤン・デ・グルーフ編著/渡部竜也監訳 |
定価 | ¥5720(本体¥5200+税) |
ISBN | 978-4-7989-1874-7 |
Cコード | 3037 |
ページ数 | 420 |
判型 | A5 |
製本 | 並製 |
序章 トマス・ミスコ(渡部竜也 訳)
第1 章 オーストラリアにおける確実性なき航海:教員志望者と共に論争問題を教えることで知的な市民性を育成する デボラ・ヘンダーソン(草原和博 訳)
第2 章 アフリカのグローバルシティズンシップに向けて社会科教育で論争問題を教えること:ガーナの場合 ルイス・アシメン‐ボアヘネ(鈩悠介 訳)
第3 章 ケニアにおける民主的市民性と論争問題教育 アン・ジェベト・ワリアウラ(守谷富士彦 訳)
第4 章 南アフリカの高校の教室における権力のダイナミクス:教師はうまくやっているのか? ヴィタリス・チココ(星瑞希 訳)
第5 章 中国の市民性教育の授業で論争問題について話をすることがないのはどうしてなのか? 朱娟娟/トマス・ミスコ(渡部竜也 訳)
第6 章 合衆国とフィリピンの教室で論争問題をナビゲート・具現化すること: 異なる文脈における民主主義の複雑性を理解するためのオートエスノグラフィの活用 スティーヴン・カミシア(金鍾成 訳)
第7 章 シンガポールの社会科の教室における学問の分化と論争的主題の教授 エンリケ・ニーニョ・P・レビステ/リー‐チン・ホー(中島蓮/渡部竜也 訳)
第8 章 韓国における論争問題教育 ビョンロ・ソン/トマス・ミスコ(金鍾成 訳)
第9 章 対立と平和への移行の中で論争問題を教えること:北アイルランドの政策と実践の分析 アラン・マッカリー/レズリー・エマーソン(渡部竜也 訳)
第10 章 「私たちは大人たちとは違います……私たちは、私たちの親ではありません」:マケドニア共和国における論争問題と熟議、エスニシティの異なる生徒たちの市民的行為の発達 J.スペンサー・クラーク/ジェームズ・スコット・ブラウン(中島蓮/渡部竜也 訳)
第11 章 アンネ・フランクの物語を通してホロコーストについて教えること:トルコの事例研究 チハン・テケリ/ベリー・ファン・ドライエル(中島蓮/渡部竜也 訳)
第12 章 ニューヨークとフロリダにおける教員志望者と論争問題指導 ロバート・ドールグレン/エマ・ハンフリーズ/エリザベス・イーガー・ワシントン(草原和博 訳)
第13 章 米国の教室における論争に対する宗教的信念と教師のアプローチの枠組み ジェニファー・フーバー・ジェームズ(桑原敏典 訳)
第14 章 同じ意見を持つ学校において政治を教えることの教授的挑戦 ポーラ・マカヴォイ/ダイアナ・ヘス/ケイ・カワシマ・ギンズバーグ(桑原敏典 訳)
〈日本と合衆国との共同研究〉
日本における論争問題の教授:教師の文脈を踏まえてのゲートキーピング行為を探る トマス・ミスコ/桑原敏典/小川正人/アビー・ライオンズ(桑原敏典/渡部竜也 訳)
社会科における論争問題についての教師のゲートキーピングのフレーム:日本の場合 金鍾成/トマス・ミスコ/草原和博/桑原敏典/小川正人(草原和博/渡部竜也 訳)
訳者解説
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