新たなる世界秩序の渦中で、日本は選択を迫られている―。
近年、国際社会では中国やロシアなど権威主義的な大国の影響力が拡大する中、米国・欧州そして日本など民主主義国家が築き上げてきた戦後国際秩序が揺らぎ始めている。本書は、米中の2国間関係を分析の基本対象とするだけでなく、それら対立に関わる世界各国・欧州・太平洋地域のアクター、さらに「グローバル・サウス」と呼ばれる南アジア・アフリカ地域での対米・対中政策の動向と秩序観を組み入れ、全世界的に分析。3部13章に渡る各地域研究気鋭の第一人者らによる最新の分析は、我が国の安全保障・外交戦略を方向付ける類書にない力作である。
タイトル | 米中対立と国際秩序の行方 |
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サブタイトル | 交叉する世界と地域 |
刊行日 | 2024年8月 |
著者 | 五十嵐隆幸・大澤傑編著 |
定価 | ¥2970(本体2700+税) |
ISBN | 978-4-7989-1912-6 |
Cコード | 3031 |
ページ数 | 328 |
判型 | A5 |
製本 | 並製 |
五十嵐 隆幸(いがらし たかゆき)(編著者)〔はじめに、コラム⑥翻訳、第8 章、終章〕
防衛研究所地域研究部中国研究室専門研究員。
防衛大学校総合安全保障研究科後期課程修了、博士(安全保障学)。防衛大学校防衛学教育学群統率・戦史教育室准教授を経て現職。専門は東アジア国際政治史。
主著に『大陸反攻と台湾―中華民国による統一の構想と挫折―』(名古屋大学出版会、2021 年)=第38 回「大平正芳記念賞」受賞、第12 回「地域研究コンソーシアム賞」受賞、第8 回「猪木正道賞(正賞)」受賞、第34 回「佐伯喜一賞」受賞=、「中共武裝力量的人力資源問題:面臨少子化及高齡化時代的中共解放軍」(『中共解放軍研究學術論文集』、2021 年12 月)など。
大澤 傑(おおさわ すぐる)(編著者)〔序章、終章〕
愛知学院大学文学部英語英米文化学科准教授。
防衛大学校総合安全保障研究科後期課程修了、博士(安全保障学)。防衛大学校総合安全保障研究科特別研究員、駿河台大学法学部助教を経て現職。専門は政治体制論。
主著に『「個人化」する権威主義体制―侵攻決断と体制変動の条件―』(明石書店、2023 年)、「ニカラグアにおける個人化への過程―内政・国際関係/短期・長期的要因分析」『国際政治』第207 号(2022 年3 月)=第15 回「日本国際政治学会奨励賞」受賞=、『独裁が揺らぐとき―個人支配体制の比較政治―』(ミネルヴァ書房、2020 年)= 2021 年度「ラテン・アメリカ政経学会研究奨励賞」受賞=など。
庄司 智孝(しょうじ ともたか)〔第1章〕
防衛研究所地域研究部長。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。専門は東南アジア(特にベトナム)の安全保障と国際関係。主著に『南シナ海問題の構図―中越紛争から多国間対立へ―』(名古屋大学出版会、2022年)=第39回「大平正芳記念賞」受賞=、「『南シナ海の領有権問題』再訪―米中対立の中の東南アジア―」『安全保障戦略研究』第4巻第2号(2024 年3月)、「ASEANの安全保障―中立性から中心性へ―」『安全保障戦略研究』第3 巻第2号(2023年3月)、「ASEANの地域秩序と米中対立―揺らぐ包括性と中心性―」『防衛学研究』第68号(2023年3月)など。
小林 周(こばやし あまね)〔コラム①②③〕
日本エネルギー経済研究所中東研究センター主任研究員。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了、博士(政策・メディア)。慶應義塾大学研究員、米国・戦略国際問題研究所(CSIS)、日本国際問題研究所などを経て現職。2021~2023 年に在リビア日本大使館勤務。専門はリビアを中心とした中東・北アフリカ現代政治、国際関係論、エネルギー地政学。編著に『アジアからみるコロナと世界』(毎日新聞出版、2022年)、共著『紛争が変える国家』(岩波書店、2020年)、『アフリカ安全保障論入門』(晃洋書房、2019年)など。
笠井 亮平(かさい りょうへい)〔第2章〕
岐阜女子大学南アジア研究センター特別客員准教授。青山学院大学大学院国際政治経済学研究科一貫制博士課程単位取得満期退学、修士(国際政治)。在中国、在インド、在パキスタン日本大使館で専門調査員として勤務。専門は南アジアの国際関係、日印関係史、インド・パキスタンの政治。主著に『第三の大国 インドの思考』(文春新書、2023年)、『インパールの戦い』(文春新書、2021年)、『「RRR」で知るインド近現代史』(文春新書、2024 年)、『インドの食卓』(ハヤカワ新書、2023年)、『インド独立の志士「朝子」』(白水社、2016年)、訳書にS・ジャイシャンカル著『インド外交の流儀』(白水社、2022年)など。
溝渕 正季(みぞぶち まさき)〔第3章〕
明治学院大学法学部政治学科准教授。上智大学グローバル・スタディーズ研究科博士後期課程修了、博士(地域研究)。ハーバード大学ジョン・F・ケネディ公共政策大学院ベルファー科学・国際関係研究センター研究員、名古屋商科大学ビジネススクール教授、広島大学大学院人間社会科学研究科准教授などを経て現職。専門は中東地域の政治・経済・軍事・安全保障問題、中東をめぐる国際関係、イスラーム政治など。主著に「レバノン・ヒズブッラーと『抵抗の枢軸』」『中東研究』第550号(2024年5月)、「なぜ米国はイラクに侵攻したのか?開戦事由をめぐる論争とその再評価」『国際政治』第213号(2024年3月)など。
ムバンギジ・オドマロ 〔第4章〕
ケニア・プロポーズド・ヘキマ大学副学長兼教務部長。米国・ボストンカレッジでPh. D(社会倫理学)取得。2022年から2023年まで上智大学客員教授。専門はアフリカの政治経済、地政学、哲学、社会倫理など。主著にEthical Leadership in Africa: Beyond the Covid-19 Global Health Crisis( 共著、2024年)、“Philosophy and Theology in Africa” in Elias Kiffon Bongmba (Ed.) The Routledge Handbook of African Theology (2022)など。
サリ・ヴィック・ルクワゴ 〔第4章〕
愛知学院大学文学部英語英米文化学科外国人教師。同志社大学グローバル・スタディーズ研究科博士後期課程修了、博士(グローバル社会研究)。日本アフラシア学会の創立会長。専門は、母国ウガンダの政治と社会、および英語圏文化教育。主著にPower back to the People: The Relevance of Ethnic Federalism in Uganda (2023) など。
相原 正明(あいはら まさあき)〔第4章・翻訳〕
防衛大学校総合安全保障研究科後期課程在学中。防衛大学校安全保障研究科前期課程修了、修士(安全保障学)。専門は日米同盟。主著に「普天間基地移設計画における米海兵隊の意図と影響」『防衛学研究』第59号(2018年9月)。
川上 桃子(かわかみ ももこ)〔コラム④〕
神奈川大学経済学部教授。東京大学大学院経済学研究科修了、博士(経済学)。アジア経済研究所地域研究センター長、同上席主任調査研究員を経て現職。専門は台湾を中心とする東アジアの経済、産業発展。主著に『圧縮された産業発展』(名古屋大学出版会、2012年)=第29 回「大平正芳記念賞」受賞=、“Competition and Collaboration among East Asian Firms in the Smartphone Supply Chains,” in Etel Solingen (Ed.) Geopolitics, Supply Chains and International Relations in East Asia (2021) など。共編・監訳書に『中国ファクターの政治社会学―台湾への影響力の浸透―』(白水社、2021年)。
大場 樹精(おおば こだま)〔第5章〕
獨協大学国際教養学部言語文化学科専任講師。上智大学グローバル・スタディーズ研究科博士後期課程修了、博士(国際関係論)。上智大学イベロアメリカ研究所特別研究員、外務省国際情報統括官組織専門分析員、明治大学・慶應義塾大学等での非常勤講師を経て現職。専門はラテンアメリカ地域研究、移民史、国際政治。主著に「ラテンアメリカにおける移出民の増加の背景と影響:アルゼンチンを事例として」(ギボ・ルシーラ/谷洋之編『ラテンアメリカにおける人の移動-移動の理由、特性、影響の探求―』上智大学イベロアメリカ研究所、2024年)など。
小泉 悠(こいずみ ゆう)〔第6章〕
東京大学先端科学技術研究センター准教授。早稲田大学大学院政治学研究科修了、修士(政治学)。外務省国際情報統括官組織専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究員などを経て現職。専門はロシアの軍事安全保障。主著に『「帝国」ロシアの地政学―「勢力圏」で読むユーラシア―』(東京堂出版、2019年)= 2019 年「サントリー学芸賞」受賞=、『現代ロシアの軍事戦略』(筑摩書房、2021年)=第8 回「猪木正道賞(特別賞)」受賞=、『プーチンの国家戦略―岐路に立つ「強国」ロシア―』(東京堂出版、2016年)、『軍事大国ロシア―新たな世界戦略と行動原理』(作品社、2016年)など。
岡田 美保(おかだ みほ)〔コラム⑤〕
防衛大学校総合教育学群教授。防衛大学校総合安全保障研究科後期課程修了、博士(安全保障学)。日本国際問題研究所研究員などを経て現職。専門はロシアの外交・安全保障政策。主著に「ロシアにおけるデジタル権威主義―なぜ反戦は反プーチンにならないのか―」『防衛学研究』第70号(2024年3月)。「ロシアとヨーロッパ―利益でつなぎ留められた関係の崩壊―」(広瀬佳一・小久保康之編『現代ヨーロッパの国際政治―冷戦後の軌跡と新たな挑戦―』法律文化社、2023年)、「日ロ関係」(油本真理・溝口修平編『現代ロシア政治』法律文化社、2023年)。
堀田 幸裕(ほった ゆきひろ)〔第7章〕
霞山会主任研究員。愛知大学国際問題研究所上席客員研究員、上智大学総合グローバル学部非常勤講師を兼任。愛知大学中国研究科修士課程修了、修士(中国研究)。筑波大学大学院人文社会科学研究科博士課程中退。専門は中朝関係、北朝鮮問題。主著に「同床異夢の中朝関係―北朝鮮の核開発問題をめぐる齟齬―」(松本はる香編『〈米中新冷戦〉と中国外交―北東アジアのパワーポリティクス―』白水社、2020年)、「「政温経冷」の中国と北朝鮮―「同盟」延長で経済支援再開も焦点に―」(伊集院敦・日本経済研究センター編『朝鮮半島の地経学「 新冷戦」下の模索』文眞堂、2022年)など。
荊元宙(けいげんちゅう)〔コラム⑥〕
台湾・国防大学政治作戦学院中共軍事事務研究所副教授兼所長。国立台湾師範大学政治学研究所博士課程修了、政治学博士。陸軍司令部情報処長を経て現職。専門は中国軍事、安全保障、武装衝突法。主要な業績として、「中国が目指す非接触型「情報化戦争」―物理領域・サイバー領域・認知領域を横断した「戦わずして勝つ」戦い―」『安全保障戦略研究』第4巻第1号(2023年12月)、「近期美中於臺海南海軍事活動之戦略意涵分析」『戦略安全研析』第163 期(2020 年8月)、Yuan-Chou Jing“, The Study of China's Military Strategy and Satellite Development: Moving Toward,” TheKorean Journal of Defense Analysis, Vol.31, No.1, March, 2019 など。
小林 正英(こばやし まさひで)〔第9章〕
尚美学園大学総合政策学部教授。筑波大学第三学群国際関係学類卒、慶應義塾大学大学院法学研究科修了、博士(法学)。在ベルギー日本国大使館欧州安全保障問題担当専門調査員を経て現職。共著に『NATO を知るための71 章』(明石書店、2023年)、『現代ヨーロッパの国際政治』(法律文化社、2023年)、『EU の世界戦略と「リベラル国際秩序」の行方』(明石書店、2023年)、『EU の規範政治』(ナカニシヤ出版、2015年)、『国際機構』(岩波書店、2021年)など。ほかにも「EU の外交・安全保障政策と対中認識:Cinderella Honeymoon」『東亜』(2019年4月)など。
デレク・ソレン〔コラム⑦〕
米空軍中国航空宇宙研究所上級研究員。立命館アジア太平洋大学卒、ノリッチ大学史学研究科軍事史学修士課程修了、修士(軍事史学)。陸軍情報特技官(対テロ任務)、陸軍太平洋司令部中国専門官を経て現職。主著に“PLA Air Force Increases Flexibility of Combat Support Units,” China Brief, Vol.23, Iss.23, December, 2023, “PLA Blows Hot and Cold over U.S. Air Force’s Multirole Heavy Aircraft,” China Brief, Vol.22, Iss.23, December, 2022, “Chinese Views of All-Domain Operations,” China Aerospace Studies Institute, Air University, USAF, August, 2020 など。
山﨑 周(やまざき あまね)〔第10 章〕
東洋大学国際学部国際地域学科准教授。青山学院大学大学院国際政治経済学研究科博士後期課程修了、博士(国際政治学)。主著に「冷戦後の中国の周辺外交におけるタイ:米タイ関係への楔打ち」(川名晋史編『共振する国際政治学と地域研究―基地・紛争・秩序―』勁草書房、2019年)、「同盟理論における結束戦略から見た中朝関係と米国要因―米中対立の将来的展望への示唆―」『防衛学研究』第68 号(2023年3月)、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)構想下の日本の対フィリピン防衛協力―日比関係の新章としての準同盟の萌芽―」『安全保障戦略研究』第4号第2巻(2024 年3 月)など。
相田 守輝(あいた もりき)〔コラム⑧〕
防衛研究所地域研究部米欧ロシア研究室所員。筑波大学人文社会科学研究科国際公共政策博士前期課程修了、修士(公共政策)。筑波大学人文社会科学研究科国際公共政策博士後期課程(在学中)。航空自衛隊第302 飛行隊長、航空研究センター研究員を経て現職。主著に「中国空軍をめぐるデジタルトランスフォーメーション―新しい整備管理システム導入からみえる取り組み―」『安全保障戦略研究』第3巻第2号(2023年3月)、“Concerning the Possibility that the Chinese TB-001 Unmanned Aerial Vehicle was Involved in Ballistic Missile Impacts,” China Aerospace Studies Institute, Air University, USAF, January, 2023 など。
古賀 慶(こが けい)〔第11 章〕
シンガポール・南洋理工大学(NTU)社会科学部准教授。米国タフツ大学フレッチャースクール修了、博士(国際関係学)。全米アジア研究所(NBR)非常駐フェローおよび日本の平和・安全保障研究所(RIPS)研究委員会メンバーを兼任。米国・ウィルソンセンター日本フェロー、米国・戦略国際問題研究所(CSIS)客員フェロー、ハーバード・ケネディスクール・ベルファーセンター・フェローなどを歴任。専門は、国際関係論、国際安全保障論、国際・地域機関、東アジア・インド太平洋の安全保障。主著に、Managing Great Power Politics: ASEAN, Institutional Strategy, and the South China Sea (Palgrave, 2022) “, Tactical hedging as coalition-building signal: The evolution of Quad and AUKUS in the Indo-Pacific,” The British Journal of Politics and International Relations, 2023 など。
はじめに 米中対立時代を迎える国際社会 五十嵐隆幸
序 章 米中対立は体制間競争か?―「民主主義対権威主義」と国際秩序― 大澤 傑
第1 部 「グローバル・サウス」と米中対立
第1 章 ASEAN と米中対立―揺らぐ地域秩序― 庄司智孝
コラム① 米中対立とエネルギー問題 小林 周
第2 章 米中対立と南アジア―インド・パキスタン・アフガニスタンの動向― 笠井亮平
コラム② 米中対立と移民・難民問題 小林 周
第3 章 米中対立と激動する中東地政学の行方 溝渕正季
コラム③ 米中対立と気候変動・災害問題 小林 周
第4 章 米中戦略的競争とアフリカ:未来を形成する役割 ムバンギジ・オドマロ/サリ・ヴィック・ルクワゴ(相原正明 訳)
コラム④ 半導体をめぐる米中対立 川上桃子
第5 章 米中対立はラテンアメリカに何をもたらすのか―アルゼンチンを事例として― 大場樹精
第2 部 米中対立と東アジア
第6 章 米中対立とロシア―安全保障面における「問題としての中国」と「パートナーとしての中国」― 小泉 悠
コラム⑤ 冷戦期における米ソ対立と中国 岡田美保
第7 章 米中対立と朝鮮半島―米朝関係改善の挫折と対「中ロ」天秤外交への回帰― 堀田幸裕
コラム⑥ 米中対立とAI 荊 元宙(五十嵐隆幸 訳)
第8 章 米中対立と台湾―大国間競争の行方を左右する「小国」の選択― 五十嵐隆幸
第3 部 誰が世界秩序を担うのか?
第9 章 担わない欧州?―多極化と戦略的自律― 小林正英
コラム⑦ 米軍の対中国シフト デレク・ソレン
第10 章 インド太平洋のパックス・アングロ・サクソニカ体制と米中対立―現代中国と戦前日本の対米挑戦及び国際秩序の展望― 山﨑 周
コラム⑧ 米軍式の軍隊を目指す中国人民解放軍 相田守輝
第11 章 米中対立の行方と日本の進む道 古賀 慶
終 章 米中対立と国際秩序の行方―世界は分断の道を歩むのか?― 五十嵐隆幸・大澤 傑
あとがき 五十嵐隆幸・大澤 傑
事項索引/人名索引/執筆者紹介