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公害被害放置の社会学
――イタイイタイ病・カドミウム問題の歴史と現在 -
公害問題の再検証を通じ日本社会の暗部を鋭く抉る
一般にすでに解決済みとみなされている公害問題だが、実はその後も見捨てられていた被害者が後を絶たない。こうした「被害放置」を生み出す理由は何か――四大公害訴訟中最も成果を収めたとされるイタイイタイ病・カドミウム問題が抱える生々しい歴史と現状を、社会学的分析に基づき精緻に再検証し、この種の「放置」は公害問題のみならず、わが国の行政・医療・社会の暗部に横たわる広範かつ本質的な現象であることを、強烈に示唆した労作。
第1章 被害放置に着目する意味
第2章 イタイイタイ病の発見はなぜ遅れたのか
第3章 公害病を否定する政治
第4章 否定された公害病
第5章 予防と放置
第6章 イタイイタイ病医学研究班の社会学
第7章 富山で今、問われていること
第8章 農業被害はなぜ軽視されるのか
第9章 食品中カドミウム濃度基準の現在
第10章 イタイイタイ病をめぐる差別と被害放置
第11章 イタイイタイ病をめぐる被害構造と放置
第12章 公害被害放置の社会学
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社会学のアリーナへ
――21世紀社会を読み解く
(シリーズ 社会学のアクチュアリティ:批判と創造 第3巻) -
今日におけるその立脚点と存在理由を追求
世紀の幕開け、変貌し続ける成果にあって社会科学が学として立つべき場所(=アリーナ)はどこか?ポストモダン論・グローバリゼーション論等、近代知の没落を告げる言説が交錯する中、社会学の固有性と今日における存在理由を追及する。
序章 モダニティの社会学理論――ギデンズを中心にして
第1章 社会学と社会システム論――システムとその「外」
第2章 社会学理論と社会病理――観察のモダンとポストモダン
第3章 近代社会学の成立――一九世紀フランス社会学の事例から
第4章 フィールドワークから社会学理論の形成へ――社会学の伝統再考
第5章 生活政治の社会学――支援社会を求めて
第6章 社会学と資本主義――生活構造論の革新
第7章 社会学から見たグローバル化・地域統合・国家――現代フランスの変貌を事例として
第8章 グローバリゼーションと人間の安全保障の興隆
終章 グローバリゼーションと社会学の未来
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公共政策の社会学
――社会的現実との格闘
(シリーズ 社会学のアクチュアリティ:批判と創造 第11巻) -
有効な政策科学としての社会学再興をめざす
高齢化の進行、新たな社会的格差の出現等の現実を前に、今や社会科学の「公共政策からの逃亡」は許されない。他分野研究者を交えた学際的執筆陣により、社会計画、NPMをはじめ従来の研究の批判的摂取の下、政策科学としての社会学の再興をめざす。
序章 公共政策と社会学
第1章 社会計画と社会指標
第2章 地域福祉計画と参加
第3章 社会サービスの割当――介護保険制度を事例とした割当過程の考察
第4章 権利・裁量・参加
第5章 介護サービスの分配の公正と政策評価
第6章 貧困の測定
第7章 ジェンダー・エンパワーメント
終章 政策評価と社会学
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東アジアの労使関係
(日本労働社会学会年報第17号) -
日本在住の中国・韓国研究者がわが国との比較の下両国の労使事情を論考した。興味溢れる特集。
特集 東アジアの労使関係
巨大市場・中国で勝つための人材戦略(徐向東)
韓国労使関係の第二分水嶺――IMF危機以降の経済構造変化と労使関係再編(金鎔基)
投稿論文
建設生産における「責任施工」と職長――「クラフト的生産」モデルにおける自律性と責任をめぐる問題(惠羅さとみ)
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貨幣の社会学
――経済社会学への招待 -
バブル崩壊の衝撃から「聖域なき構造改革」に至る、戦後日本経済の歴史的経緯をタテ糸に、諸社会機構、市場、銀行、共同体、国家等と連関して働く貨幣の社会的機能を具体的に考察した新貨幣論。
序
第1講 ネオ・リベラリズムの時代――「聖域なき構造改革」
第2講 資本市場の構造転換――「失われた十年」
第3講 メディアとしての貨幣
第4講 市場と価格――裁量主義の隠蔽と悲劇
第5講 貨幣と銀行
第6講 貨幣と共同体
第7講 貨幣と自由主義
結び――新しい貨幣的関係に向けて
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「居住福祉学」の理論的構築
(日本居住福祉学会 居住福祉ブックレット14) -
中国の原初の住居形態、及び近代以来「人間居住」を巡る世界的な思想や理論などを踏まえ、人類史的に「居住福祉」の必然性を再確認し、住居を通して「居住」の本質を見出す。また、「居住福祉学」の理論的な枠組みも解説する。
1 歴史的にみる住居の福祉的な役割、世界にみる「居住福祉」への志向(中国の原初の住居にみる「居住」と「福祉」の不可分性;中国の古代の住居にみる複合的居住機能と福祉機能;近代以来の人間居住の研究にみる「居住福祉」への志向)
2 「居住福祉学」を展開するための理論(「居住」には基本的に三大属性がある;居住における多様な社会機能に注目すべきである;居住空間に求められる多元性の中に「居住福祉」を見出すべし;「五大系統」の理論からみる「居住福祉学」)
3 「居住福祉学」の理論的な枠組み(「居住福祉学」の定義;「居住福祉学」を研究するための要点と基本的な枠組み;体系としての「居住福祉学」を目指して)
- 改革進むオーストラリアの高齢者ケア
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個別尊重を前提とした示唆に富むその全体像
施設ケアから在宅ケアへと、高齢者ケア改革の大きな流れの中、オーストラリアがこれまで築き上げてきた「福祉多元化」の実践は注目に値する。利用者の個別性尊重を実践原則に、公私バランスを得たサービス事業の多様性を生かし、制度の硬直性を排しつつその洗練度を上げる等、多様性と統一性との独自な調整の在り方は、介護保険の枠組みにとらわれ、問題化を招く同質性に陥りがちな日本の現状への大きな示唆となるだろう。初のオーストラリアの高齢者介護の全体像。
第1章 ソレントへ――Mrs.A、最後の日々
第2章 高齢者ケア改革の歩みと現状
第3章 アセスメントの実際
第4章 地域在宅サービス制度――HACC
第5章 包括的在宅ケアプログラム:COPとCACPそしてEACHへ
第6章 介護者支援の強化
第7章 強制的競争入札制度(CCT)の顛末
第8章 文化的多様性への対応
- コミュニティ政策5号
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巻頭言 市民主権型自治体への道――住民自治力・市民社会力の強化による地域再生
第5回大会基調講演 分権時代における市民自治型自治体
特集論考・自治省モデル・コミュニティ施策の検証(1.コミュニティ施策検証の視点と論点、2.コミュニティ施策の展開、3.自治省モデル・コミュニティ地区の事例検討、4.コミュニティ政策の到達点と課題)
自由投稿論文 NPOと自治会等地縁型団体の協働による地域コミュニティ再構築の諸要件
第5回大会報告
書評 大内田鶴子『コミュニティ・ガバナンス』
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認知症家族介護を生きる
――新しい認知症ケア時代の臨床社会学 -
認知症とされる者への介護経験を中心に、家族介護者の経験の記述・分析を行いながら、その経験と近年の新しい認知症ケアとの関係や、認知症にまつわる現象を分析する社会学のあり方を考える。
序章 呆けゆく者と生きるということ
第1章 呆けゆく者への「はたらきかけ」の現在
第2章 呆け/呆けゆく者への社会学的まなざし
第3章 呆けゆく者への出会い
第4章 家族介護を生きることの分析に向けて
第5章 認知症家族介護を生きることとは?
第6章 介護者家族会は何を支援するのか?――他者定義への支援(1)
第7章 「人間性」の発見はいかにして可能か?――他者定義への支援(2)
終章 呆けゆく「人間」と生きていくこと――社会学の課題
補遺 フィールドワークの概要
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サンヴァラ系密教の諸相
――行者・聖地・身体・時間・死生 -
知られざる一大密教伝統に関する初の包括的研究
サンヴァラは、9世紀以降仏教界に展開した後期密教の巨大な宗教伝統であり、インドでの仏教滅亡以後も、チベットやネパールの仏教の重要な構成要素として現在も生き続けている。本書はその重要性とは裏腹に、これまで本格的研究に乏しかったサンヴァラ系密教に関する初の包括的研究であり、数々のサンスクリット語写本等を通じ、この密教体系の重要な諸側面を、同時代のインド・ネパールのサンスクリット文化の中に位置付けながら紹介・論考した労作である。
まえがき
序論
第1章 初期中世密教界
第2章 多次元的な聖地群の諸伝承
第3章 曼荼羅としての身体
第4章 外的な時間の輪
第5章 四輪三脈の多面的身体論
第6章 クリシュナ流の四次第
第7章 死兆と死のヨーガ
結論にかえて
資料
初出一覧
あとがき
索引
- 福祉社会学研究4号
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基調講演
福祉社会研究の3レベル――マクロ・メゾ・ミクロ(山手茂)
特集 福祉社会の基盤を問う――ソーシャル・キャピタルとソーシャル・サポート
特集解題:趣旨,論点,総括(三重野卓、田渕六郎)
ソーシャル・キャピタルとNPO・ボランティア(田中敬文)
ソーシャル・キャピタルと健康(藤澤由和)
ソーシャル・サポート,ケア,社会関係資本(稲葉昭英)
特別寄稿
ソーシャルエコノミーをめぐる諸概念と非営利組織(ジョン・バン・ティル、須田木綿子 訳)
自由論文
女性の介護:ライフコース視点からの考察(菊澤佐江子)
初期認知症高齢者の語り合いにおける相互作用過程(佐川佳南枝)
ニューヨーク市のワークフェア政策――就労「支援」プログラムが受給者にもたらす効果(小林勇人)
パネルディスカッション報告
大阪におけるホームレスとソーシャル・インクルージョン(鎮目真人)
書評論文
東アジア福祉レジーム分析の現状――日韓比較の視点を軸に(河野真)
日本の児童虐待問題に関する研究の10年――社会福祉学の研究者v.s.社会学の研究者(三島亜紀子)
書評
和泉広恵著「里親とは何か――家族する時代の社会学」(神原文子)
白波瀬佐和子編「変化する社会の不平等」(土場学)
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最下流ホームレス村から日本を見れば
(日本居住福祉学会 居住福祉ブックレット12) -
ホームレス問題を通して日本の、おもに居住福祉の現状や未来を考えようとするレポート。「きちんと住む」ってどんなことなんだろう。それを失うってどんなことなんだろう。ホームレス支援活動の現場、とりわけ釜ケ崎での経験から見えるニッポンの居住風景の切り取りです。
1 実態(最下流の人々、その住み方;新たな人々が次々と流れ着く;あなたも「ホームレス」にあてはまるかも ほか)
2 対策を考える(「居住のはしご」論で野宿から遠ざかる;シェルターの役割と限界――無いよりはマシだけど…野宿固定化の役割も;ホームレス自立支援センターの役割と限界――それでも活用するのが現場の発想 ほか)
3 まちづくりとともに(ホームレス対策のゴールってどこ?;アルコール依存症も居住安定から;「ふるさと」はつくるもの、地域は立て直すもの ほか)
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世界の借家人運動
――あなたは住まいのセーフティネットを信じられますか?
(日本居住福祉学会 居住福祉ブックレット13) -
本書は世界の借家人団体、9ケ国、11団体の活動等を紹介し借家人運動の現状を報告するものであるが、それと同時に最近の厳しい世界経済情勢による各国の社会住宅政策後退の現状を伝えたいと思う。
1 なぜ、いま借家人運動を取り上げるか?(仕組まれた「持家志向」、歪んだ公共賃貸住宅政策、ウィーンの社会住宅、住宅政策無責任国家のもたらしたもの)
2 国際借家人連合(国際借家人運動の歴史とIUTの結成、国際借家人連合(IUT)の目的、活動と理念)
3 各国借家人団体について(スウェーデン、オランダ、ドイツ、フランス、イギリス、オーストリア、オーストラリア、日本、アメリカ合衆国)
4 参考資料「借家人憲章」
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[改訂版]ボランティア活動の論理
――ボランタリズムとサブシステンス -
人間の根源的な支えあい(サブシステンス)の理念を基盤に、ボランティア活動の一層の定着化・システム化をめざす白眉の論考。新稿「市民活動の国際比較研究」等加え、待望の改訂新版刊行。2006年NPO学会研究奨励賞・2006年日本都市社会学会若手奨励賞・2007年生協総合研究所研究賞受賞。
第1部 市民活動研究の展開(市民活動の広がりと研究課題/「生」に関わる市民活動への注目/戦後日本におけるボランタリズムの変遷)
第2部 阪神・淡路大震災が生みだした市民活動(大震災とボランティア活動の展開/新たなボランタリズムの生成/共感にもとづく非営利事業/地域社会に根づくコミュニティ事業/市民活動団体による「資源獲得の戦略」)
第3部 市民活動の国際比較研究(ボランタリー組織から社会的企業へ)
第4部 市民活動研究の理論的課題(市民活動のアドボカシー機能・再考/ボランティアが切りひらく市民社会の可能性)
- 労働社会学研究8号
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論文
労使関係における企業別組合の機能の可能性――会社分割におけるA労組の対応事例から(金沢英樹)
主婦がネットワークビジネスで働くということ――非近代的労働における新しいアイデンティティーの可能性(湯浅正恵)
研究例会報告
セカンドライフの生活拠点としての農村地域への移住と就業時の葛藤に関する研究(吉川光洋)
職業キャリアと職業観――貝島炭鉱砿離職者の事例分析より(中間報告)(吉田秀和)
日系ブラジル人労働者の就労経路と生活スタイル(1)(長浜市への転入・転出経路と就労状況)(近藤敏夫)
日系ブラジル人労働者の就労経路と生活スタイル(2)(日系ブラジル人質問紙調査の報告)(長光太志)
飯場労働者の意味世界における労働――重層下請構造の末端としての飯場(渡辺拓也)
- 公共政策の分析視角
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現下の焦点的課題群への多角的切り込み
「政策決定に関する研究」かつ「政策決定のための研究」であるという学問的多様性――いま政治学分野において最も注目を集めている公共政策研究に関し、その学としての方法・態様の整序を行うと共に、今日の焦点・公共性と市場的効率の問題を見据えつつ、現下の具体的諸課題につき、理念と実際を統合し多角的に切り込んだ意欲的研究。
第1章 公共政策と公的部門の市場的経営――公共性と効率を両立させる道
第2章 政治参加による公共政策の形成――選挙政策と政治改革の論理
第3章 公共政策の行政経営的展開――イギリス・ブレアリズムの分析を通じて
第4章 公共政策による人材育成――貿易パターンおよび頭脳流出に与える影響
第5章 移植医療の公共政策――造血幹細胞移植に関する新規立法の必要性
第6章 公共政策分析の方法と態様――比較政治学の場合
- 保健・医療・福祉の研究・教育・実践
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第1部 社会福祉の専門性と教育
(ヨーロッパにおけるソーシャルワーク教育の動向――ボローニャ・プロセスの影響に焦点を当てて;ソーシャルワークとスピリチュアリティ ほか)
第2部 支援・援助の展開と再検討
(「生活支援」概念の形成過程;介護実践における自立支援の再検討 ほか)
第3部 保健・医療・福祉の現状と課題
(新潟県における認知症高齢者グループホーム――現状と課題を中心に;サテライト型特養の現状と課題――施設と家庭の融合は可能か・学生の介護観構築のために ほか)
第4部 保健・医療・福祉研究の方法と理論
(健康・保健と社会制度;現物給付の給付機構にかんする一考察――医療保険を中心に ほか)
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社会政策研究7号
特集:市民活動・NPOと社会政策 -
特集 市民活動・NPOの位置づけをめぐる現代的文脈
社会政策とNPO
高齢者世代の社会保障
NPO研究における社会的企業アプローチの可能性と課題
ボランタリー・セクターの再編成過程と「社会的企業」
ガバナンスを導く協働(パートナーシップ)の可能性
自由論文
戦間期日本における生存権の意味
学資保険訴訟の問題構造
高齢者・家族・サービス提供者の相互関係分析
書評
武川正吾・金淵明編『韓国の福祉国家・日本の福祉国家』
武川正吾・イヘギョン編著『福祉レジームの日韓比較』
辻村みよ子・稲葉馨編著『日本の男女共同参画政策――国と地方公共団体の現状と課題』
山口二郎・坪郷實・宮本太郎編著『ポスト福祉国家とソーシャル・ガヴァナンス』
OECD編著、阿萬哲也訳『世界の医療制度改革・質の良い効率的な医療システムに向けて』